Atom Z540の動作電圧を下げて高負荷時の発熱を抑えてみた

Atom Z540を使いこなすシリーズの第3回目です。
前回オーバークロックとは逆にVAIO type PのAtom Z540の発熱を抑えて、高負荷が連続した時に起こるクロックダウンの回避を試みてみました。今回の記事の内容に関しても前回と同じく、ある程度知識に自信のある方以外にはお勧めしません。十分な知識をお持ちの方のみ自己責任でお願いします。

発熱を抑える方法としてはオーバークロックとは逆にクロックを下げるという方法と、CPUの動作電圧を抑えるという方法の2通りが考えられます。前者ではCPUだけでなくFSBやメモリのクロックも抑えられてしまうので性能も低下してしまうのに対して、後者では上手く行けば性能を低下させずに発熱のみ抑えることができます。そのため後者の方法で発熱を抑えてみることにしました。前者に関してはここではこれ以上触れませんが、SetFSBを使ったオーバークロックの場合と同様に行えば十分に技術的には可能です。

CPUの動作電圧を下げるツールとしてはCrystalCPUIDを利用しました。CrystalCPUIDは少し前までのAMDのCPUでの電圧制御ツールの定番として知られています。CrystalCPUIDの実際の使い方に関してはhttp://www.marbacka.net/asm64/arkiv/crystalcpuid.htmlを始めとして多くのサイトで既に解説されているので詳細は省きます。基本的にはAMDでもIntelでも設定方法は同じなので、AMDのCPUでの使い方でもCool'n QuietをEISTに置き換えればIntelのCPUに当てはめることができます。
IntelのCPUではEISTに対応しているものなら使えるとのことなので試してみるとAtom Z540でも使えました。ただしCrystalCPUIDはシリーズ1回目でも触れたようにAtom Z540の電圧を正確に検出できないため、電圧が実際に変化していることを確かめるにはCore TempやCPU-Zを併用する必要があります。なお、CrystalCPUIDと同様にCPUの電圧を制御するツールとして知られているRightMark CPU Clock Utility (RMClock)はAtom Z540に対応していないため使えませんでした。

実際にCore Tempでクロックや周波数を確認しながら色々と試してみたところ、CrystalCPUIDのAtom Z540での使用に関して以下のことが確認できました。

  • Multiplyer ManagementもIntel Enhanced SppedStep Controlも利用可(ただしIntel Enhanced SppedStep Controlは倍率14倍でしか使えない)
  • EISTが有効になっているとEISTの設定が優先される(故にEISTとの併用は避けた方が良い)
  • 倍率は6.0倍から14.0倍まで1.0倍刻みで変更可
  • 電圧は0.962 Vから1.150 Vまで0.0125 V刻みで変更可
  • Core Temp、CPU-Zでの電圧の読みはCrystalCPUIDで設定した値より0.1125 V低くなる

実際の作業としてはEISTが無効になるように電源オプションを設定し、Intel Enhanced SppedStep ControlまたはMultiplyer Managementで倍率を固定しながら電圧を既定値*1から少しずつ下げていきPrime95で負荷を掛けてエラーが起きない電圧の下限を探していくという形になります。Multiplyer Managementでは3つしか条件を設定できないので固定する倍率は3つで十分です。参考までに結果を示しておくと、私のZ540では下限の6倍と上限の14倍、その中間の10倍で固定し、その結果、14倍では1.075 Vまで、10倍では0.962 Vまで電圧を下げることができました。6倍は元々のEISTの設定が既に電圧の下限の0.962 V(Core Tempの読みでは0.8500 V)なので特に低電圧耐性の検討はしませんでした。
この結果を受けて、Multiplyer Management Settingで下の写真のようにMaximumを14.0x、Mediumを10.0x、Minimumを6.0xとし、負荷試験で得られた下限電圧の値を設定しました。当然ながらCPU毎に個体差があり他のAtom Z540でも同じ結果になるとは限らないので、この設定はあくまでも参考に止めくれぐれもそのまま真似たりしないようにして下さい。

更に、タスクスケジューラでログオン時に最上位権限で/CQ /HIDE /RESIという引数を付けてCrystalCPUIDを実行するように設定すれば、これをWindows起動時に自動で適用させることができます。下の画面写真では実際に倍率14倍、すなわち動作クロック1.86 GHzの時に0.9625 Vで動作しているのが確認できます。

休止やスリープでの運用に関しては、休止では特に問題は発生しないのですが、スリープからの復帰時にMultiplyer Managementによる電圧制御が無効になることがあります。詳しく調べてみたところ、手元にあるVAIO type P+Windows 7という環境では、最小化して通知領域にのみアイコンがある場合(下の図の左側)には復帰時にMultiplyer Managementが維持されるのに対して、最小化していてもタスクバーにアイコンが残っていると(下の図の右側)高い確率で復帰時にMultiplyer Managementが無効になるようです。ただ上記の点に気をつけていても気がつくとMultiplyer Managementが止まっていたりするので他にも影響を与える要因がありそうです。

実際にCrystalCPUIDで電圧を落として使用してみたところ、処理速度はそのままで、高負荷時にはそれなりに発熱はするものの熱によるクロックダウンの頻度が少なくなったという印象を受けました。ただ、夏の気温の高い時期でもクロックダウンが回避できるかという点に関しては少々疑問が残ります。

*1:シリーズ1回目の倍率と電圧の表を参照